眩しさ

 

眼科の検査では瞳孔をひらく薬をうつので、鏡でみるとわたしの目はフクロウみたいにまんまる、帰り道の世界は目があけていられないほどに眩しくなる。   調布へ向かうバスから見えるこの世界の中で、いちばん眩しいものは白線です。この街を暴力的に区切る白くて美しい線。デッサンをするなら木炭紙の地の色を活かすか、練り消しできりりと消せばよいでしょう。    つぎに眩しいものはひとです。風を感じながら走るひと、難しい顔をしてタバコを吸うひと、手を繋いで歩くひと、犬の散歩をする車椅子のひと、そのどれもが白線で区切られたこの世界の中を躍動し、ちらちらと輝きながら行き交っている。この世界で愛をつかみそこねているのはわたしひとりのように感じられる。わたし以外のすべてのひとが、眩しい。   「また1年後に検査に来てほしいんだけど、別の街に引っ越したようだから難しいですか」「いえ、先生の丁寧な説明を聞くのが楽しみなのでまた1年後に来ます」