地縛霊

 

廊下で出会い頭、2年生、元気いっぱいな女の子に「ねえ、先生はハロウィンの仮装なににするつもり?」と問われ、「わ、わたしは・・・わたしは・・・」と答えに窮しているうちに、「わたしは黒猫さんだよ、ニャンニャン♪」と言い残して女の子は消えていた。        子どものころ、先生のことを地縛霊だと思っていた。「わたしたちはどんどん成長して通りすぎていくのに、先生はずっと学校に置いてけぼりで、寂しくないの?」と聞いたこともある。大人になって、先生にも学校以外の人生や世界があるという当たり前のことはわかったけれども、わたしはむしろ、「寂しくないの?」と聞いたあのときに置いてけぼり。        子どもたちの声が響く廊下で、大人になったわたしがぽつんと取り残されている。「わたしは・・・なにに仮装するんだろう・・・」