うすむらさき色の薬を飲んで今日のわたしを途絶えさせるのではなくて、今日という日のわたしの気持ちをかかえたまま、どこか別のせかいへ消えてしまいたい。大人になってまで、どうしてこんな気持ちになってしまうんだろう。わたしのあたまは、わたしだけのもの。 秋の夜風があまりにも心地よくて、ひとり散歩をした。夏に使いきれなかったのであろう花火をしている家族の、線香花火の煙のそのにおいがこちらまで流れてくるから、わたしはつい縁石の上を、平均台を渡るように歩いた。芝生の広場へゆくと、サンダルの隙間から草花がわたしの足をくすぐってきた。わたしはサンダルを脱いで、シロツメクサの上に足を置いた。足が汚れてもかまわなかったから。 わたしは魂をにぶらせたくない。このままどこか別のせかいへ行けたらいいのに、大人になってまで。
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私が揺れると鈴の音が鳴る
悲しみを消すための 傷が絶えない
カネコアヤノ「こんな日に限って」