芸術/生きること

芸術の価値はあとからでないとわからない。言い換えると、表現行為の時点ではその価値をあらかじめ確かな目標として設定することができない。だから、そこには徒労感がある。むしろ、徒労感が伴わない芸術は疑った方がいいとさえ言える。徒労感が伴わないということはつまり、現在の既に了解された価値基準に則っているということであって、そこでは芸術の本質的な価値に迫ることはできないから。さらに、芸術はその人の人生に要請されている必要がある。わたしは空に顔を浮かべないし、街で氷を溶かさない、しかたない、だってそれはわたしの人生には必然性がないから。だから徒労感があっても、自分の人生が要請することに、自分にとって差し迫ったことに、結果的に価値があるかもしれないと信じて、芸術も、人生も、やるしかない。わたしたちは人生のほとんどについて祈ることしかできない。徒労感の中にだけ、人生の本当がある。さみしくてたまらないけど、あとからわかることだけが、さよならだけが、人生の本質だ。きっとそれが、芸術のように生きるということなんだ。