これが私の優しさです

先生と呼ばれて働くなかで、知らないうちにその立場にあぐらをかいてしまうんじゃないかとこわい。自分が、ひとに影響をあたえられる存在だと思いこんで、おごり高ぶってはいないか。または将来もしかして、親になるときが来たとして、傲慢になってしまわないかとこわい。子どもに自分を重ね合わせ、まるで自分の人生かのように操作してしまったとしたら。     わたしはなるべくみんなと他者でいたい。みんなとなるべく他者でいつづけるための強さは、どうしたら手に入るんだろう。

これが私の優しさです

 

窓の外の若葉について考えていいですか
そのむこうの青空について考えても?
永遠と虚無について考えていいですか
あなたが死にかけているときに

 

あなたが死にかけているときに
あなたについて考えないでいいですか
あなたから遠く遠くはなれて
生きている恋人のことを考えても?

 

それがあなたを考えることにつながる
とそう信じてもいいですか
それほど強くなっていいですか
あなたのおかげで

 

谷川俊太郎『これが私の優しさです』

わたしはこの、「あなた」のようになりたい。    さびしいけれど、わたしとあなたは絶対的に他者である、別々の人生である。それを受け入れてこそ、互いに優しくあれるのだということが、「あなた」からわかる。     「いつでもわたしを忘れていいのよ」といえるひとになっていくこと。それは孤独に少しの温かさを感じられるようになるということ。若葉が芽吹く日のような。